京都国立博物館 メールマガジン 臨時号 第33号[KNM:0033]



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●博物館Dictionary No166
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紙とは違う材料に書き写す

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皆さんは、勉強する時にノートを使いますよね。ノートに漢字を書い
たり、計算をしたり、先生が黒板に書いたものを写したりすると思いま
す。そのノートは紙で作られており、その材料はパルプというものです。
しかし、もし紙がなかったら、皆さんは何を使ってノートを取るでし
ょうか? 今回はそんな疑問(ぎもん)を持ちながら、ロシアの探検隊
が中央アジアで発見した珍しい写本(しゃほん)(書き写された本のこと)
をいくつか見ていくことにしましょう。
まずは、1号室に展示してある作品番号6『ダルマパダ』(写真1)と
いうお経を写したものを見ることにしましょう。それは、なんと白樺(し
らかば)の樹皮(じゅひ)を薄(うす)く切って、お経を書き写してい
ます。白樺は涼しい高原によく生えている白い幹(みき)をした落葉樹
(らくようじゅ)ですが、書き写された時期は、紀元1世紀から2世紀
頃と考えられています。ということは、今から1,800年以上も前という
ことになります。これだけでもびっくりするような話です。このあたり
に住んでいた人々は、まだ紙という材料を知らなかったのです。そこで、
身近にあるもので文字を書き写す材料を考えて、白樺の樹皮を使ったの
でしょう。ただ、何枚も書き写さなければならなかったので、順番が狂
(くる)わないように両端を麻紐(あさひも)のようなもので縫(ぬ)
って綴(と)じています。その形も大変貴重なものです。ここに使われ
ている言葉は、西北インドの方言であるガンダーラ語という言葉で写さ
れており、文字は右から左へ読んでいきます。
次も木に書いたものですが、同じ展示ケースの中にありますから、す
こし奥へ移動してください。作品番号14「納税文書(のうぜいもんじょ)」
(写真2)は、税金を払ったことを書き記した文書です。まず、その形
を見て下さい。台所にある包丁(ほうちょう)のような形をしていて、
表裏両面に書いてあります。中国の遺跡(いせき)や日本の平城京から
も木簡(もっかん)(木の札に書いたもの)がたくさん出土しますが、そ
れらのほとんどが薄くて平らな棒のような形をしています。同じ木簡で
も、ずいぶん違いますよね。
では、次の2号室に移動してください。作品番号26「アビダルマ」(写
真3)と名前がついていますが、これは植物の葉にお経を書いたものな
のです。その葉を貝葉(ばいよう)といいます。インドでは古い時代か
ら、お経を書き写すのに多羅(たら)という、木の高さが20縲・0メート
ルにもなる熱帯植物の葉を使っていました。その葉を乾燥させて適当な
大きさに切断し、お経などを書き写す材料にしたものを貝多羅(ばいた
ら)(樹木の葉という意味)葉(よう)、略(りゃく)して貝葉と呼んで
いるのです。お経を書き写すと何十枚や何百枚もの貝葉になってしまい
ます。そこで、穴をあけて紐のようなものを通すわけです。この貝葉に
は穴があけてありますが、その穴の位置は左側だと思います。これはお
そらく、右手で貝葉をめくっていくからでしょう。また、1・2号室で
展示してある貝葉形式と書いてある写本は、この貝葉のかたちを紙の上
に置き換えたものです。
さて、葉に書く、これで思いつくことはありませんか? 私たちが葉
書といっているもののもともとの意味は、木の葉に書いた手紙のことな
のです。この貝葉こそが、葉書のルーツといってよいでしょう。でも皆
さんは、葉書ではなくメールかもしれませんね。
そのほか、紙を使ってはいますが、古い時代に珍しい文字で書いたもの
もたくさんありますから、どうぞゆっくり見てください。
(美術室 赤尾 栄慶)
写真1 『ダルマパダ』
写真2 納税文書
写真3 アビダルマ
画像はすべてロシア科学アカデミー東洋写本研究所蔵
cPhotos, the Institute of Oriental Manuscripts of the Russian
Academy of Sciences, St. Petersburg, 2009

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