京都国立博物館 メールマガジン 第10号[KNM:0010]      

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[ご挨拶]
  特別展覧会「憧れのヨ竏茶鴻bパ陶磁―マイセン・セ竏茶買求Eミント
ンとの出会い―」も、会期の後半に入ります。今回の展覧会を御覧にな
って、印象に残る作品はどれでしょうか。第6室に展示している、宮内
庁三の丸尚蔵館の所蔵のフランス・セ竏茶買距qの瑠璃地金彩夫人像双耳
花瓶は、そのような作品の一つではないでしょうか。セ竏茶買汲ェ得意と
した琉璃地金彩の手法、すなわち白磁の釉にコバルトを混ぜた釉薬をか
けて焼いた藍一色の磁器に、さらに金で線や文様を焼き付ける手法は、
中国の元時代に起源があり、その後、明時代の宣徳年間には「宝石藍」
と讃えられた美しい瑠璃地の磁器が作られています。セ竏茶買汲ェ手本と
したのは、おそらくもっと新しい清時代の瑠璃地の磁器でしょうが、ヨ
竏茶鴻bパを代表する名窯にも、東洋の影響が色濃くみられるのです。セ
竏茶買距qの瑠地金彩夫人像双耳花瓶のすばらしさは、この中国の焼物に起
源のある美しい琉璃地金彩の技法が、ギリシア陶器に起源のある美しい
フォルムと結びついた点にあるように思います。
 また、平常展示館では、先月紹介しました特集陳列「仏師清水隆慶竏箪r老いらくのてんごう竏秩vが来月末まで、御覧になれます。さらに、23
日からは、毎年人気の高い特集陳列「雛まつりとお人形」がはじまりま
す。御来館を御待ちしております。
(Y.N)

[特別展覧会:開催中]  憧れのヨーロッパ陶磁―マイセン・セーヴル・ミントンとの出会い―
平成20年1月5日(土)縲・月9日(日)
特別展示館

 いつの時代も、人は異国に対して一種の畏れを感じる一方で、強い憧
れをもつようです。このところ、高級食器としてのヨーロッパ陶磁が人
気を博し、テーブル・コーディネートで活躍している背景にも、おそら
くある種の「異国趣味(エキゾチシズム)」があるのでしょう。しかし、
日本人とヨーロッパ陶磁との出会いは、そんなにごく最近のことではあ
りません。早くも江戸時代初めから日本人はヨーロッパのやきものを賞
翫してきており、その歴史はすでに四百年近くにも及んでいます。
 江戸時代の日本人に愛されたヨーロッパ陶磁とは、一体どのようなも
のだったのか? そして、日本へもたらされるヨーロッパ陶磁は、明治
維新をはさんで、どのように変貌していったのでしょうか?
 大英帝国がその繁栄を誇ったヴィクトリア女王の時代に活躍した著名
な工芸デザイナー クリストファー・ドレッサーが選び、日本へもたらし
たイギリス陶磁。約百年前にニーダー・シュレジエンのフリッツ・ホッ
ホベルク伯爵から贈られたマイセン・ベルリンなどのドイツ陶磁。それ
らに加えて、オランダ・フランス・デンマーク・ハンガリーなど、ヨー
ロッパ各地の魅力的なやきものおよそ百七十件を紹介します。
 さらに、ヨーロッパ陶磁のデザインの源流となった東洋のやきものや、
逆にヨーロッパの影響を受けて作られた日本の陶磁器を通して、洋の東
西を超えた文化の相互影響をさぐります。江戸から明治時代の日本人が
実際に目にしたヨーロッパ陶磁の数々を通して、彼らが感じたであろう
異国情緒にひたってみませんか。


主な展示作品
・多彩釉白泥花唐草文飾壺 イギリス ミントン 東京国立博物館蔵
・青地色絵飛鳥文皿 イギリス ミントン 東京国立博物館蔵
・瑠璃地金彩窓絵人物図双耳壺 フランス セーヴル 東京国立博物館

・色絵楽奏猿像〈猿のオーケストラ〉ドイツ マイセン 京都国立博物
館蔵
・色絵薔薇花形カップ ドイツ マイセン 京都国立博物館蔵

展覧会詳細は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tokubetsu/080105/tokubetsu.html
携帯版は→http://www.kyohaku.go.jp/i/ctokuten-yo.html



[新春特集陳列:開催中] 仏師 清水隆慶―老いらくのてんごう―
平成20年1月2日(水)縲・月30日(日)
平常展示館5・6室

 みなさんは仏師というと、どの時代の誰を思い浮かべますか。多くの
人は飛鳥時代の止利仏師、平安時代の定朝、鎌倉時代の運慶や快慶と
いったところを、まずは最初に思い浮かべるのではないでしょうか。そ
れは、仏像を専門とする研究者にしても同様で、近世の仏師については、
これまであまり研究が行なわれてきませんでした。ところが近年になっ
て、江戸時代の仏師や彼らが製作した仏像などにも次第に注目が集まっ
てきています。
 今回特集する清水隆慶も、江戸時代に京都で活躍した仏師で、四代ま
で続きました。今回はそのうち、麟岡<りんこう
と名乗った初代(一六
五九縲怦齊オ三二)と、毘首門亭<びしゅもんてい
を名乗った二代(一七
二九縲恚繻ワ)の作品を展示します。といっても仏像ではなく、仏師の余
技ともいうべき風俗人形の類が中心です。初代隆慶自身は、これらを「老
いらくのてんごう(老人のいたずら)」と称しました。仏像造りに使う技
能を世俗的なものに使ってしまった、という照れからでしょうか。しか
し、さまざまな造形上の約束事がある仏像にくらべると、これら人形類
は、自由な発想でのびのびと製作され、巧みな彫技が遺憾なく発揮され
ています。江戸時代の京仏師のてんごうぶりを、じっくりとご覧ください。


主な展示作品

百人一衆
画像は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/img/ryukei/r2.jpg
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/img/ryukei/r1.jpg

[江戸時代]
初代清水隆慶位牌
二代清水隆慶位牌
関羽立像
竹翁坐像
維摩居士坐像
大黒天立像
髑髏
富士見西行像
千利休立像
展覧会詳細は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/ryukei/ryukei.html
携帯版は→http://www.kyohaku.go.jp/i/ctokutin-oi.html


[特集陳列:予告] 雛まつりとお人形
平成20年2月23日(土)縲・月30日(日)
平常展示館17室

厳しい寒さを乗り越えると、春の訪れとともに、本年もまた雛まつりの
時節がめぐってきます。緋毛氈のうえに仲良く座るお内裏さまとお雛さ
ま。官女たちを筆頭に行儀良くならぶお人形や、小さな雛のお道具。雛
まつりは、身についたケガレを人形に移して祓う行事が起源とされます
が、現代の私たちにとっては、寒さに凍えた心を暖かな春へと解き放つ、
そんな心浮き立つ行事ではないでしょうか。
京都は、嵯峨人形・衣裳人形・御所人形・賀茂人形・雛人形と、さまざ
まな種類の人形を生み出した人形文化の中心地です。京都国立博物館の
「雛まつりとお人形」展では、このようなお人形と雛飾りの変遷がご覧
いただけます。
また本年も、京都の地で人形を保存・公開している、京都文化博物館・
博物館さがの人形の家・宝鏡寺門跡とともに、「京の雛めぐり」と題し、
協力して展覧会の紹介を行います。
近年は大揃えの雛段を飾ることも珍しくなりました。ご家族づれで展示
をめぐり、童心にかえって人形の世界をお楽しみください。

展覧会詳細は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/hina2008/hina2008.html
携帯版は→http://www.kyohaku.go.jp/i/ctokutin-hi2008.html


[少年少女博物館くらぶ]
特集陳列「雛まつりとお人形」にあわせて、展示をもとに設定したテー
マについて、作品を見ながらわかりやすくお話しします。
平常展示館ロビーにお集まりください。 --------------------------------------------------------------------------------
テーマ/第六回 「雛まつり再発見!」
日 時/3月2日(日) 午後1時30分より40分程度
講 師/研究補佐員 山内麻衣子
イベント詳細は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/kouza/club/index.html
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[チェンバロミニコンサート]
実際にヨーロッパ陶磁が使われていた空間を体感していただくために
ディスプレイされた特別展示館中央ホールにて、「憧れのヨーロッパ陶
磁」展に展示されている作品たちが作られた時代に、奏でられていたで
あろう音楽をお届けします。演奏は中野振一郎門下筆頭の演奏家・吉田
朋代さんです。
毎週金曜日の朝、優雅なひとときをお過ごしください。
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会期/特別展「憧れのヨーロッパ陶磁」開催期間中の毎週金曜日
 午前10時より20分程度
2月 1・ 8・15・22・29日、3月7日
出演者/吉田朋代
入場料/特別展覧会「憧れのヨーロッパ陶磁」の観覧料が必要になりま
す。
会場/特別展示館 中央ホール
イベント詳細は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tokubetsu/080105/gaiyou/event.html
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[バレンタインコンサート]
特別展覧会「憧れのヨーロッパ陶磁」に出展される色絵楽奏猿像「猿
のオーケストラ」。フリッツ・ホッホベルク伯爵から贈られたマイセンで
すが、この猿たちが持っている楽器は1760年代のもの。型を作った当時、
果たしてヨーロッパではどのような音楽が聞かれていたのでしょうか…。
当公演では「当時の楽器」を使い、ハイドンやモーツァルトの音楽をそ
の時代の音として再現します。音楽を通してマイセンの魅力を実感でき
るという企画です。
 演奏は、ドイツの名手クリスティーネ・ショルンスハイムとチェンバロ
の中野振一郎を師とする若きフォルテピアノ奏者・高田泰治と、「ウィー
ン仕込みの古典派」が魅力のヴァイオリン奏者・大谷史子。指揮者・延
原武春のお話しとともに展開するマイセンの「音体験」を楽しんでいた
だける内容です。
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会期/平成20年2月13日(水)18時30分 開演(18時開場)
出演者/延原武春 お話し(日本テレマン協会/代表)
高田泰治 フォルテピアノ/大谷史子 ヴァイオリン
演目/ F.J.ハイドン
    /3つのソナタ
     第40番 ト長調  Hob.XVI竏窒S0
     第41番 変ロ長調 Hob.XVI竏窒S1
     第42番 ニ長調  Hob.XVI竏窒S2

W.A.モーツァルト
   /ソナタ 第3番 変ロ長調 K.281(189f)
   /ヴァイオリン・ソナタ ト長調 K.301
                        ほか
※曲目は都合により変更されることがあります。
入場料/座席指定 S席 3,000円、 ペア席 5,000円
(*本料金に特別展覧会の観覧料は含まれておりません)
会場/京都国立博物館 講堂
イベント詳細は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tokubetsu/080105/gaiyou/event2.html
●チケットのお求め方法(1月16日(水)より開始)
1. ご来館の方への窓口販売 
販売場所:京都国立博物館 南門観覧券売場(七条通側)
販売時間:開館日の閉館30分前まで。
ただし、第2、第4土曜日は無料観覧日のため販売いたしません。
2. 電話:075-531-7504(京都国立博物館 総務課事業推進係)
 (受付時間は月曜日から金曜日の10:00縲・7:00。祝日は除く)
3.WEBからの申込み
申込は→https://www7.kyohaku.go.jp/KNM/servlet/Main
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[スプリングオペラコンサート]
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会期/
第1回:平成20年3月21日(金)18時30分 開演(18時開場)
第2回:平成20年3月22日(土)14時 開演(13時30分開場)
出演者/ ソプラノ/井上ゆかり メゾソプラノ/渡辺 敦子
バリトン/与那城 敬 テノール/中川 正崇 
ピアニスト/小埜寺 美樹
演目/ ヘンデル『セルセ』より「なつかしい木陰よ」
与那城 敬
ロッシーニ『セビリヤの理髪師』より「ごらん、空が微笑み」
中川 正崇
ロッシーニ『セビリヤの理髪師』より「今の歌声は」
渡辺敦子
グノー『ファウスト』より「宝石の歌」
井上ゆかり
ビゼー『カルメン』より「セギディーリヤ」
渡辺敦子
プッチーニ『蝶々夫人』より「ある晴れた日に」
井上ゆかり
他、オペラアリアと日本・イタリア歌曲より
※都合により出演者・プログラムは変更になる場合があります。
入場料/座席指定・平常展入場券付き
●Sエリア(一人及び一組の料金)
S席 3,500円、 ペア席 5,000円(2席1組で販売)

●Aエリア(一人及び一組の料金)
A席 2,200円、
ファミリー席 
保護者(保護者及び子供の組合せで販売) 2,200円
子供1,300円(中学生まで)
会場/京都国立博物館 特別展示館 中央ホール
イベント詳細は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tokubetsu/080105/gaiyou/event3.html
●チケットのお求め方法(1月16日(水)より開始)
2. ご来館の方への窓口販売 
販売場所:京都国立博物館 南門観覧券売場(七条通側)
販売時間:開館日の閉館30分前まで。
ただし、第2、第4土曜日は無料観覧日のため販売いたしません。
2. 電話:075-531-7504(京都国立博物館 総務課事業推進係)
 (受付時間は月曜日から金曜日の10:00縲・7:00。祝日は除く)
3.WEBからの申込み
申込は→https://www7.kyohaku.go.jp/KNM/servlet/Main
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[土曜講座]
毎週土曜日の午後1時30分から、当館講堂において、当館研究員が展
覧会や展示品に関連した講座を行っています。
参加費は無料。定員は176名です。
テーマによっては外部講師をお招きしています。
なお、特別展覧会開催中および特別展覧会開催中以外の毎月第2・4土
曜日開催の講座に関しては、講座当日の12時45分から渡り廊下にて入
場整理券を発行します。整理券がなくなり次第、受付を終了いたします
ので、あしからずご了承願います。
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平成20年2月2日
テーマ/オランダ渡りの西洋陶器とその影響―江戸時代後期を中心に―
講師/神戸市立博物館主幹・学芸員  岡 泰正氏
*整理券発行/特別展覧会「憧れのヨーロッパ陶磁竏茶}イセン・セーヴ
ル・ミントンとの出会い竏秩v(1/5縲・/9)関連土曜講座
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平成20年2月9日
テーマ/岩倉使節団の見たヨーロッパ陶磁
―ミントン・セーヴル・ベルリン・ジノリ―
講師/西洋陶磁史家 大平雅巳氏
*整理券発行/特別展覧会「憧れのヨーロッパ陶磁竏茶}イセン・セーヴ
ル・ミントンとの出会い竏秩v(1/5縲・/9)関連土曜講座
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平成20年2月16日
テーマ/マイセン磁器の動物彫刻
講師/九州産業大学COE研究員 櫻庭美咲氏
*整理券発行/特別展覧会「憧れのヨーロッパ陶磁竏茶}イセン・セーヴ
ル・ミントンとの出会い竏秩v(1/5縲・/9)関連土曜講座
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平成20年2月23日
テーマ/近代日本が見た西洋陶磁
―旧・国立陶磁器試験所コレクションを中心に―
講師/愛知県陶磁資料館学芸員 佐藤一信氏
整理券発行/特別展覧会「憧れのヨーロッパ陶磁竏茶}イセン・セーヴ
ル・ミントンとの出会い竏秩v(1/5縲・/9)関連土曜講座
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講座詳細は→http://www.kyohaku.go.jp/jp/kouza/kouza.html
携帯版は→http://www.kyohaku.go.jp/i/doyou.html


[第13回ミュージアムロード:知ったはる? もっと京都!]
いろいろな博物館・美術館で楽しみながら、「京都のこと」を学んでみ
ませんか?
 京都市の主催するミュージアムロードに、当館の特集陳列「雛まつり
とお人形」が京の文化への道という企画で参加しています。当館のみな
らず、参加館に足をお運びいただき、幅広い分野で「京都」を見て、知
って、体験してみませんか。
各会場に設置されているスタンプを集めれば、素敵なプレゼントに応募
できます。詳しくは会期中、各会場に設置のスタンプラリー用紙をご覧
下さい。
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会期/平成20年2月9日(土)縲・月16日(日)
*各会場により、期間が異なります。
詳細は→http://www.city.kyoto.lg.jp/kyoiku/
(京都市教育委員会)
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[博物館Dictionary] No.156 
あなたに語る・時代を超えて生きる心

法成寺(ほうじょうじ)の軒瓦(のきがわら)竏柱ケ氏物語(げんじものがた
り)の時代―

 考古2室の平安時代の瓦について勉強しましょう。

タイムマシンは発明されていませんけれども、みなさんは今からちょう
ど一千年前の京都を想像できるでしょうか?西暦でいうと1008年、日本
の年号では寛弘(かんこう)五年という年です。時は平安時代のまっただ
なか、藤原氏(ふじわらし)全盛の貴族政治の時代でした。この寛弘五年
に宮廷(きゅうてい)の女性や貴族たちの間ですでに『源氏物語(げんじも
のがたり)』が読まれていたことが『紫式部日記(むらさきしきぶにっき)』
に記されています。そのために今年は源氏物語の完成一千年目を記念し
たさまざまな行事がこの京都を中心に開催される予定です。ここでは源
氏物語の時代にゆかりのある考古遺物(こうこいぶつ)を見てみましょう。
源氏物語はもちろん紫式部が考えた架空(かくう)のお話です。しかしそ
こに描かれた光源氏(ひかるげんじ)の華麗(かれい)な暮らしぶりやさま
ざまな恋愛の描写は当時の宮廷生活を見聞きしたことがベースとなって
います。紫式部がそのような上級貴族の暮らしを知っていた理由は、彼
女の才能を評価して宮廷にあがるようにスカウトしたある歴史上の人物
にありました。その人の名前は「望月(もちづき)の歌」で有名な藤原道
長(ふじわらのみちなが)(966縲・027)です。彼はこのころ左大臣(さだ
いじん)で正二位(しょうにい)、朝廷ではならぶもののない権力者でした。
道長は自分の長女彰子(しょうし)を一条天皇(いちじょうてんのう)の中
宮(ちゅうぐう)(皇后(こうごう))として宮中(きゅうちゅう)に入れま
したが、その付き添いの女性(女房(にょうぼう)と呼ばれます)のひと
りとして紫式部をスカウトしたのです。実際に紫式部は彰子に漢詩(かん
し)を教えたりもしています。また道長が源氏物語の執筆(しっぴつ)を応
援(おうえん)していたことも記録にみえています。
この源氏物語の時代を考古学的な遺物で紹介することは、残された遺物
が少ないために困難(こんなん)が多いのです。その遺物のなかで今回は
画像1,2に揚げたお寺の瓦について見てみましょう。一見あまり美し
くは見えないこの瓦は藤原道長と深い関係があります。

画像1(軒丸瓦 法成寺跡出土 京都府立鴨沂高等学校蔵)は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/mmd/mmd156-1.html
画像2(軒平瓦 法成寺跡出土 京都府立鴨沂高等学校蔵)は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/mmd/mmd156-2.html


この瓦は道長が自宅(現在の京都御苑(きょうとぎょえん)の東部にあた
り、「土御門殿(つちみかどどの)」と呼ばれていました)の東隣に建立
した「法成寺(ほうじょうじ)」というお寺の跡から出土したものです。
この法成寺は藤原道長がその晩年、寛仁(かんにん)四年(1020)に建設
を始めた寺院でした。道長の日記が『御堂関白記(みどうかんぱくき)』
と呼ばれるのもこの法成寺があまりにも巨大で壮麗(そうれい)であった
がゆえでした。寺には金堂(こんどう)を中心に西に阿弥陀堂(あみだどう)、
池をはさんで東に薬師堂(やくしどう)という伽藍配置(がらんはい
ち)を基本として、広い範囲に様々な建物が造られました。
画像1,2の瓦は蓮華文(れんげもん)の軒丸瓦(のきまるがわら)と唐草
文(からくさもん)の軒平瓦(のきひらがわら)です。その産地は京都の西
側の丹波国(たんばのくに)、現在の亀岡市(かめおかし)の篠王子瓦窯(し
のおうじがよう)であったことが分かっています。道長に奉仕(ほうし)
をした中級貴族である丹波守(たんばのかみ)(国司(こくし))がわざわ
ざ用意したものとされています。なぜかって?その熱心な奉仕(ゴマす
りともいいますが)の代償(だいしょう)として左大臣の道長様からまた
別の実入りのよい国の国司に任命(にんめい)してもらうためなのです。
瓦にみられる蓮華文様や唐草文様は、平安初期の均整(きんせい)のとれ
たものからは明らかに退化(たいか)していますが、この法成寺では次の
時代の中世的(ちゅうせいてき)な巴文(ともえもん)などはまだ現れてい
ません。また法成寺の瓦の中には緑色のうわぐすりのかかった瓦も含ま
れており、極楽浄土(ごくらくじょうど)を目指したこの寺がいかに豪華
(ごうか)であったかを伝えています。
この法成寺を紫式部が目撃(もくげき)したかどうかは、彼女の亡くなっ
た年があきらかでないのでなんとも言えません。しかし紫式部の同僚(ど
うりょう)であった赤染衛門(あかぞめえもん)が記した『栄花物語(えい
がものがたり)』には「御堂(みどう)あまたにならせ給(たま)うままに、
浄土はかくこそとはみえたり」「垂木(たるき)のはしばしは黄金の色な
り、よろづの金物はみな黄金なり。おまへの方の犬ふせぎはみな金のう
るしのように塗りて・・」など法成寺の華麗なありさまが延々(えんえん)
と描写されていて、現在のわたしたちもその様子を十分想像することが
できます。道長が万寿(まんじゅ)四年(1027)に亡くなったのもこの法
成寺の阿弥陀堂の中でした。そして法成寺はのちの時代の寺院に大きな
影響を与えました。宇治市(うじし)の平等院鳳凰堂(びょうどういんほう
おうどう)や木津川市(きづがわし)の浄瑠璃寺(じょうるりじ)などにそ
の面影(おもかげ)をみることができます。
現在、この法成寺は廃絶(はいぜつ)し、建物はなにも残っていません。
法成寺は京都御苑の東側、京都府立鴨沂(おうき)高等学校の敷地付近に
あたります。そこには寺あとを示す石柱がわずかに一本立っているだけ
なのです。源氏物語一千年紀の今年こそ藤原道長の栄華(えいが)をしの
んで訪れてみてはいかがでしょうか。
画像3(法成寺址を示す石柱(京都市上京区荒神町付近:河原町通り荒
神口バス停下車、西へ徒歩2分))は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/mmd/mmd156-3.html

(考古室 宮川禎一)

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